2022年08月18日
20年以上もパリに住み、「コンセント パリ アッシュ・ペー・フランス」のディレクター兼バイヤーとして、才能ある若手デザイナーの発掘と、コレクションの買い付けをするために世界中を飛び回っている湯沢由貴子さん。パリから新しい情報や商品を送り込むだけではなく、年2回の帰国時はかならず自らショップに立ち、1日中接客をすることでお客様との会話を楽しみ、売り場の空気感をつかみます。
ハービスPLAZA ENTにあるショップは「コンセント パリ アッシュ・ペー・フランス」の1号店にして現在唯一の店舗。鋭い感覚でセレクトされた商品に魅せられて、この店に長年通い詰めているお客様には、そんなカリスマバイヤーである湯沢さんのファンも多いそう。
〈写真上〉
バイヤーの湯沢由貴子さん
「21世紀を明るくたくましく生きる大人の女性に向けたバイヤーズショップ、というコンセプトは開業時からまったく変えていません。たくましくというのは、いろんなものを受け入れる柔軟さのこと。クチュール的なものから、パンク、スポーティ、可愛いもの、ボーイッシュなもの。またブランドものとそうでないもの。それらすべてをミックスして着られる大人の女性をイメージしています」と、湯沢さん。「コンセント」というのは、「結びつける」という意味。お客様とクリエイターの個性の出会いの場でありたいという願いからつけられたのだとか。
ロンドン、ミラノ、パリの展示会やショールームをくまなく回って、大きなメゾンから新進気鋭の作品までを「コンセント」というフィルターを通して買い付けた洋服やバッグ、アクセサリーは10以上の国、30ものブランドをミックスしたもの。そのなかには、湯沢さんによって日本に初めて紹介されたブランドもたくさん。「展示会やショールームを回っていると、今年はこれだ!とピンとくる瞬間があるんです。いつもなら絶対に買い付けないような色を今年は入れてみようと思ったり。そういうインスピレーションを大切にしています」。
マネキンのポーズには動きをもたせ、ウイッグは整えすぎずラフにまとめる。「ディスプレイは売り場の命」ともいう湯沢さんは、店長の石川志保さんに、パリからオンラインでコーディネートと同時に着せ方までも伝えているそう。「同じ洋服でもエリをどう立てるか、ベルトの位置をどうするかといった着こなしで印象が変わってみえます。ギャラリーに行くような感覚でディスプレイを見に来てくださる方も多いんですよ」と、石川さん。「ここにはLaboratoire(ラボラトワール/実験)、Legende(レジェンド/伝説)、Love(ラブ/愛)という三つの「L」があります。実験的なもの、ヨーロッパの職人の手による上質なもの、日常を楽しくする愛すべきものが共存しているギャラリー空間なんです」。
型にはまらないアイテムが多いから、石川さんはお客様にその商品のもつストーリーまで伝えているそうです。「マニュアル接客ではない、本当の意味での人と人とのコミュニケーションを大切にしています。年齢や体型にこだわりすぎず、好きだと感じたものは試してみてほしいですし、ご自分では選ばないようなアイテムにも挑戦してみてほしい」。挑戦することで思い込みを打ち破り、ご自身でも気づかなかったおしゃれに目覚めるお客様も多いそう。「この店のセレクトって、まったく媚びてないんです。刺激的であることがお客様に愛されています。『これは湯沢さんからの挑戦状よね!』なんて笑いながら、楽しそうにお買い物をしていかれるんですよ」。
ずっと心に残る洋服。人生を変えるような洋服。ファッションの自由と楽しさを伝えてくれるアイテム。美術館のようなディスプレイ。「コンセント」は世代やジェンダーを問わず、ファッション好きの人を引き寄せる魅力に満ちています。
※記載の情報は記事作成時点のものです。