
2026年03月01日
柔らかなブラシが革靴の上で一定の速度で静かに動く。毛先が表面をなぞるたび、革の表情が少しずつ、確実に明るさを帯びていく…。「ハーク キョウト」は京都発の革を愛する人々のためのラグジュアリーな靴磨き専門店。代表者である寺島直希氏は10代で路上靴磨きを始め、2019年「靴磨き選手権大会」で史上最年少優勝。京都の小さなアトリエからスタートし、今や高級賃貸レジデンスで常設サービスを展開するなど、活躍の場を広げています。

その最新拠点がハービスPLAZAに。ガラス越しにのぞく店内は静かな明るさに満ち、初めての方でも安心できる雰囲気です。革靴、バッグ、ジャケット、スニーカー、家具に至るまであらゆる革製品のメンテナンスはもちろん、リペアやカスタマイズ、グッズ販売など様々なサービスを提供。ハービスを訪れる好感度な大人たちが「大切な革製品のメンテナンスならこちらに」と絶対的な信頼を寄せる一軒です。

「店名の〈HARK〉には、『耳を傾ける』という意味が込められています。医者が患者に寄り添うように、内側までくまなく靴やバッグの“声”に耳を澄ますと同時に、お客様がどのようなシーンで使いたいのかなどを、丁寧にヒアリングすることから始めます」と寺島氏。この靴を特別な場で履きたいのか、日常で楽しみたいのか。お客様のご要望をすくいとり、革の状態を見極めながら、科学的なエビデンスをもとに最善の対応を提案する―単に磨き上げるだけではなく、用途も踏まえた“ベストな状態”を導き出す姿勢こそ、「ハーク キョウト」が厚い信頼を得ている理由でしょう。

印象的なエピソードのひとつに、長年大切にしまわれていたゴルフシューズの相談があります。「とても気に入っているが履く機会がなくて」と悩むお客様に対し、寺島氏はソール交換で、普段でも楽しめる一足にリメイクすることを提案。生まれ変わった靴にお客様は大変喜ばれたそう。思い入れのある品を新しい形で日常に取り戻す―それはリペアを超え、人生に新たな物語を添える仕事でもあるのです。

「ハーク キョウト」がオリジナル開発した液体メンテナンス剤もまた、磨きの道具を超え、革の芸術性を引き出すアイテム。“柳茶”、“錫”、“消炭”、“曙”といった日本の豊かな17の色調が揃います。「お好きな色味を新たに乗せ、自分だけの一点ものに育てるのも革の楽しみ方のひとつです。例えば茶系の靴に緑を乗せていくと、葉が徐々に紅葉していくような変化が感じられますよ」。

寺島氏が「磨く」所作の美しさや、モノを丁寧に扱うことの大切さに目覚めたのは、幼少の頃。自分の野球グローブやランドセルをピカピカに磨き上げていた少年は、やがて確かな技術力と知識を身につけ、靴磨きを芸術の域にまで高めようとしています。
けれどもその門戸は決して堅苦しくなく、ふらりと立ち寄れるオープンさも大きな魅力。「大切なバッグや靴などに『シミがついた』『傷がある』と悩んだら、お気軽にカウンターへお越しください」と寺島氏。「些細なお困りごとでも、革に関する御用聞きとしてお役に立てれば幸いです」。


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